第17期新人公演「裸・フランス」
新人担当へのインタビュー

公演直前の新人たちの稽古。
良くも悪くも気合入り、殺気立つ稽古場になるわけです。

ここ早稲田大学演劇倶楽部の新人募集の方法は、6月初旬に応募を締め切り、
9月の新人公演に向けてみっちり稽古する、というのが毎年のコース。
例年、入ってくるのは10人程度。たいていの練習メニューもそれに合わせてできているような気もするが…。
今年は、なんと24人が新人公演に出演することに!
要するに倍だね。
余談だけれど、私が育った村の小学校は、一学年が23人だった。
全く、ただでさえ新人の稽古は大変なのだ。その上この多人数となれば、
新人担当の負担たるや相当なものに違いない、と、思ったのだけど?

「新人担当」が話してくれたのは、人の数ではなく、人と人との話。
新人担当・白坂英晃
辛い・楽しい・辛い・楽しい…


小林(以下小):よろしくお願いします。
白坂(以下白):よろしくお願いします
上村(以下上):よろしく。
小:ではまず…。どうでしたか、24人来たときは?
白:そうだなあ…。
上:とりあえず考えてたことが何もかもぶち壊しになったじゃないですか(笑)。
5月、6月ぐらいの時点で。

白:一度ぶち壊しになった瞬間にインタビューに来ればよかったんだよ(笑)
上:まあ、それがぶち壊しになったぶん、楽しめたんじゃないかな。
白:楽しい…?んー。苦労も2倍だけど楽しさも2倍って感じかな。
小:子供が増えたみたいですね!?
白:(笑)。 まあ、ここまでの充実はなかったと思いますよ。
小:稽古のほうは普通にやれてるんでしょうか?
白:もう普通に。俺と上村とで分かれて普通の稽古をやっている。例年10人ちょっといる人たちに新人担当が付いて一日稽古をする、というのがただ単に二つ同時に行われてるだけで、別に変わらない。ただ、きついのは…僕らもきついし彼らもきついのは、比較の対象がすぐ隣にいてしまうこと。
上:いやあ、僕らは辛くないよ。
白:(笑)。 僕らは辛くなくても、やってるほうは辛いだろう。もし自分があの立場にいるとなったら、「何で比較されんねん」って。僕らのときだったら、去年とか一昨年の人たちと比較されるわけでしょう?でも、それは全然別のものだし。
上:でもさあ、実際比較してるのは周りであって、彼ら自身に比較させるかどうかじゃない?
白:いや、でも深層心理としてはあるわけだから。それが、目に見えないプレッシャーになるんじゃないかな。お互いに。それが例年より辛い。
小:もし、今年が例年どおりの人数だったとしたら、今とは違っていたかもしれないと?
白:いや、一つ確かなのは、別に人数が分散して僕らが二つに分かれたからと言って、もし10人だったらもっと濃い練習ができましたかって言ったら、そうじゃないかな、って。遜色のないものは絶対にやれてるし。
上:いや、むしろ面白いものをやってるね。その点は自信ありますよ。

もう、何もかも違う

小:今回ダブルキャストにした理由などあれば、聞かせてください。
松:単純に一つの舞台に出したら24人も動き回れないから(笑)
白:いや、あったんですよ、いろいろ。最初ね、それぞれ違う脚本で三本立てにしようかなとか。二本立てで別の脚本にするとか。けど何が重要かなと思ったときに、二つに分けるとなったら、ただでさえ二つに分かれちゃうわけじゃないですか。で、その上別々にしたりしたら、同じものをやった、っていう風には…「新人公演といえば『裸・フランス』だったね」っていう風には思えないんじゃないかな、って。
上:…へーえ。
白:え?散々したじゃんこの話。
上:そんなクサイ話聞いてないよ(笑)。
白:いや、もっとフランクに言っただけだよ…。まあ、そういうのがあったから。やっぱ同期意識はあったほうが絶対いいし。
松:あとさ、二人がやりやすかった、ってのもあったんじゃない?違うより同じにしたほうが。
上:あー、それは確かに(笑)。ホントにバラバラになっちゃうね。
白:俺が意見欲しいときも、別々にやってたらそれもできないか。あー、そうするとさすがに。
小:じゃあ今はお互いに話し合ったりしつつ?新人担当補佐・上村敦
白:そりゃーもう。かなりしてますよー。
上:例年の倍はしてるんじゃない(笑)?
小:内容はその日見たものとか?進み具合とか?
白:そうだねー。悩み相談とかね(笑)

小:そういうときも、やっぱり視点は少しずつ違うわけですよね。
白・上・松:いや、全然違うよー!
小:あれ?
上:良かった、気ぃ合わなくて、って思う(笑)
松:それがAB結構出てるからね。
小:あ、ダメ出しの感じとかも違いますもんね。
松:だから何から何まで全然違うんだよ!
小:そ、そんなに!?
上:教えてる人も違えばやってる人も違う(笑)
白:そしてやってることも違う。
小:全然違うものができてる、と…。それは始めから予定してたことだったんですか?
白:いいえまさか。
上:予定してましたよ。
小:どっちですか(笑)!
白:いや、目指してるものは一緒です。取り組み方が違うだけで。
上:でも正直、目指してるものも違う気がするけどな。微妙にね。
白:でも、目指してるものが違っても身に着くものは一緒だよな、とは思う。
上:あ、それはあるかな。
白:だから、もしAとB二つをお客さんが観に来たとしたら、全然違う印象を受けるかもしれない。もしかすると彼ら(新人たち)も公演に対してAとB、違う印象があるのかもしれない。けど、終わったときに身に着いてるものは一緒かな、って気がする。
上:普通に新人公演が10人だったとして、それと比べて(手を下にして)こうではない、というものはやりつつ、僕らだから教えられる方向性をそれぞれ教えようとしてる、ってものなんじゃないかな。
白:例年さあ、やっぱなんだかんだ言って新人公演って新人担当の色が出るじゃん。教えてる人の色が絶対出ると思うんだよね。それがたまたま白坂色と上村色がちょっとずつ出てる、っていうだけだと思うよ。
上:ちょっとで済んでるかなあ?
(一同笑い)

言葉が届かなくなるとき
様子

白:しかし…演出やったことあるかなんて、関係ないね。演出経験、むしろ邪魔。俺も、一役者で向かってますもん。彼らには。
藤村:役者の先輩として、役者を、こう…
上:一役者じゃないね。一人間。
藤:お。上手いこと言った。
上:一人の人間として、一人一人と向かい合う。下手なカッコつけは無駄ですからね。
白:無駄だねー。カッコつけなんてね、自然に崩れる(笑)
上:まあ僕は別に最初からこういう人だし。とりあえず、絶対に上手いつもりとかはしないし、偉そうにもしない。隠さないでやろうと。
白:いや…。ただ単に言葉が届かなくなる。
松:嘘だからね。
白:自分をすごい人に見せたりだとか、誰かの物真似したりだとかしてもね、届かないんだよ言葉って。無駄。いや、わかんなかったんですよ。新人とどう向き会えばいいかわかんなかったから、自分が見てきたことをやってみたんですよ。だけど次第に通じなくなる。絶対届かないですよ。自分の言葉じゃないと。
松:あと、みんな初めてだから噛み砕いた言葉で言わなきゃいけないし。
藤:噛み砕くと。
松:それが段々上手くなっていくよね(笑)
白:一番苦労しましたね(笑)!
藤:「だから要するにぃ!」とか?
松:たとえば「もったいない」とか言っても絶対わかんないわけじゃないですか。実際私も新人のときに誰かに言われたけど、何がもったいないんだかさっぱりわかんなくって。だから、そこをどうわかりやすく言うか。
上:でも。んー、噛み砕いても通じない気がする。実感が伴わないと。彼らに実感させて、そしてそれに僕なりの言葉を付けて。で彼らと僕の間に一つの言葉が通じるようになって共有の言葉が出来る。それをつくっていかないと、結局何も出来ない。実感なしに理屈だけ言っても結局わからない。
白:締めでいくら偉そうなこと言っても無駄ですよね。
上:稽古場の中で言葉が出来る。
白:「そうそうそれだよ」っていうものがないと、その人の中に僕らが当たり前のように使っている意味が伝わらない。
藤:コミュニュケーションの原点ですね。
白:うん。ほんとそうだと思いますよ。
上:感じるよね。…それはほんとに感じる。
松:自分たちが当たり前って思ったことも彼らにとっては当たり前じゃないしね。
小:当たり前のこともできない?
松:できないんじゃなく、知らない。
白:だから、言い続けてわかるまで耐えなきゃいけない時間ってあるからね。
上:結局その、教える、できない、そういう言い方が間違ってる気がする。やっぱり、さっきのコミュニュケーションの原点じゃないけど、お互いに一つ一つ実感を共有してく―経験を共有してくに過ぎない。僕らがしてることは。全然そんな、教えられるとか、伝えられるようになったとか、そんな偉そうなことじゃ。

楽しめ!


藤:今年の新人たちに一番伝えたいことは何ですか、っていう質問はどうですか??
上:「楽しんで下さい」かな。芝居を楽しみ尽くして下さい。絶対に辛いと思わない。楽しんで楽しんで――最後の一週間は楽しかったなんていう屁みたいな感想じゃなく――ずっと楽しかった・そんで最後が一番楽しかった。ぐらいに楽しみ尽くさないと。もったいない。楽しめるんだから楽しんだほうがいいじゃないですか。
小:上村さんは楽しめなかったんですか?
上:演劇をやっている人たちを見てると楽しんでなさ過ぎる気がする。変にマゾヒスティックになってるから。もっと楽しめばいいんじゃないかな。
白:…だからやっぱりここで二人にはズレがある。僕は変にマゾヒスティックな人ですから(笑)。俺は…演クラの新人募集のチラシあるじゃん。あそこに書いてあることをやっているだけ。「舞台に立つまでの過程を学びます」って。だから、それを教えてる。
小:つまり、辛い稽古をするということですか?
白:いや、もちろん、僕も舞台を楽しむことだよ。楽しめよ、っていうことは常々言ってる。それは同じだと思うよ。ただ、その楽しむまでの過程にいろいろあるんだよ、ここまでやらないと楽しめないよ、舞台に立つにはそんな程度では楽しめないんだよ、ほんとには。っていう感じで愛の鞭をふるってる(笑)。だからまあ、辛いんじゃないかな。
松:今の時期が、ね。
藤:今のうちに辛いことを知っとけ、って感じですかね。
白:いや、一刻も早く彼らが楽しんでくれることに越したことはない。ただし、もがいてるんだったら、自分たちで浮上してくるまでは、先導はするけど引っ張ることまではしたくない。自分たちの力で楽しめれば、ベストだけど。そこの過程のところで僕と上村がちょっと違うっていうだけであって。最終的に出てる人が楽しめれば。

「新人公演だから」ってさ。serious

小:お客さんに見てほしいところは、新人さんの楽しんでるところ、というわけですね?
上:いや、そんな気で来た奴は度肝を抜かれるぐらいにしたいね。
白:「やべえ、馬鹿がたくさんいる」と思ってくれれば。
松:「新人公演てほかにもいろいろあるけど、こんななんだ」っていう。
小:新人公演らしい公演?
上:絶対やだよそんなの(笑)!
藤:上村さんが納得いかない顔してますけども!?
上:なんか、たかをくくってる気がする。新人公演っていう単語自体が。まあ、そんなつもりで見た人には後悔させる。「何だよもっとハナから舞台を楽しんどけば良かった」って。もう最初の10分「新人公演」と思って観ちゃったことが悔いになるくらい、それぐらいのものにしないと。
小:お客さんが「新人だから」っていう目で見てしまう、それを裏切りたいと?
白:甘いですね。そうやって観る人は、甘い。演劇関係者が観に来てたら、言ってやりたいですね。「あんたらよりすごいよ」(笑)。もし、新人観てやるかあ、って観に来た演劇関係者がいたら、そういう考えになっちゃったあんたらよりすごいですよ、彼らのほうが、って。
松:ざまあ見やがれみたいな感じでしょ。
上:新人も何もないでしょ、表現手段として。

小:それでは、そんな新人公演、観にいらっしゃるお客さんに向けてどうぞ。
上:お客さんかあ。新人たちの知り合いがすごく多いんでしょうね(笑)。そんな人たちなら、観て、あーコイツ変わったなー、って。コイツこんな一面があったのかー、って。ていうか、コイツこんな奴だったのかー、って。思うんじゃないかな。で、ほかの知らない人たちが観たら度肝を抜く。そんな感じを楽しみにして来てください。
小:白坂さんはどうですか?
白:ん…。面白いと思いますよ。受け取り方なんて人それぞれなんだから。観に来た人誰しもが、っていうのは…。誰しもが同じ感情にはならないと思う。ただ、その同じにはならなくても、何か大きく動かすものにはなると思う。だから、上村が言った、友達だったら、コイツこんな一面があったんだ、っていうのもあるだろうし、演劇関係者が観て度肝を抜いたりだとか。…まあ、やってるやつらが楽しくて、観てる人たちはすごいと思って。そういうのが、なんと2パターンも観れてしまう!という。
小:2パターン両方見ないと、損をするぞ、と?
上:たぶん、一つ見るともう片方も見たくなっちゃうんじゃないかな!?
白:そうだね!?
上:もう、2つ見ないつもりでも、そうなっちゃうんじゃないかな!?ということは、
土曜 昼・夜日曜 昼 のうちに見ておかないと…!最後の大楽で見ちゃうと後悔しちゃうかも!?なんて気さえしてきますね。
白:見ときゃよかったもう一組!なんて思うんだろうね!
松:間違いない!


インタビューを終えて
話を聞くうちに伝わってくるのは、お互いを信頼する意識。
そしてそれにも増して、新人たちへの信頼ですね。
「やつらはやってくれると信じてるから」。
言葉に出すのは簡単だけれど、実際に信じるというのはなかなか難しいというのに。
けれど舞台において何より要求されるのは役者同士の信頼。
まあ、この人たちのもとで育つ新人たちなのだから、心配する必要もなさそうだけれど。
「新人は本番の一時間前でも成長する」とは、我が演劇倶楽部の秘伝の言葉。
これを胸に新人たちはまだ見ぬ舞台へと向かうわけですが…。
果たしてこの「新人も何もない新人公演」、どこまで成ることだろう?
確かめられるのは舞台の上だけ。さあ、とくと御覧あれ!
↓ ↓ ↓ ↓ ↓ ↓ ↓
17期 新人公演ホームページ!


白坂英晃
2002年度新人担当
演劇倶楽部15期
過去の作・演出作品は
2000年度新人公演「マイライフ」
企画公演「ポップコーン」、
「ジョーカー・ジョーカー」
2002年、ユニット「はらぺこペンギン」を
立ち上げる。
旗上げ公演は同12月予定。
主な出演履歴:
宇宙マナー「クレオパトラムース」
ブラジル「白い薔薇/眩しすぎて」
笑顔・白坂英晃  上村敦
2002年度新人担当補佐
演劇倶楽部15期
主な出演履歴:
ジアザーサイド「トルシエ」
宇宙マナー「クレオパトラムース」
演劇倶楽部企画公演「ポップコーン」
同「ジョーカー・ジョーカー」
笑顔・上村敦


松浦絵里子

演劇倶楽部15期
主な出演履歴:
ポツドール「メイクラブ」
カノン工務店「覆面姉妹」
同「Palty Portrait」
宇宙マナー「クレオパトラムース」、
演劇倶楽部企画公演「ハイビスカス」
同「ポップコーン」、
同「パノ」


笑顔・松浦絵里子


 藤村恭子
(写真右)
 演劇倶楽部14期
 伊トウ本式正式構成員。
 今回はインタビューを担当!
 ありがとうございます!


素敵・藤村恭子
インタビュー&文 藤村恭子
写真 水川奈津美 藤村恭子

→ interview page
→ top


2002.09.07 インタビュー実施