キリン以上ゾウ未満 インタビュー
常にエネルギッシュで、とどまる事のない男、水谷栄介。
稽古場を覗かせてもらい、出演者にもその思いが確実に伝わっている事を知った。その彼が今回手がけるのは「キリン以上ゾウ未満」。興味をそそられるこの芝居について、深く迫り、マニア心をくすぐる玩具のようなしかけを紐解いていきたいと思い、インタビューをしてみた。
▼ トライしてみたい
荒木(以下、荒):では、よろしくお願いします。
水谷(以下、水)、滝口(以下、滝)、松木(以下、松):よろしくお願いします。
荒:今回、まぁ新人公演、茄子と豚(12月に行った17期が中心の企画公演)と短期間で順調に来て、「キリン以上ゾウ未満」。忙しいですね。体力は大丈夫ですか?
水:体力…うーん、僕は終わると戻るかなあ、結構。(一つの公演が)終わって、一日二日あったら戻るし。体力というより、精神的なものというか、それさえも分からないような 勝手な重圧っていうか・・・
滝:うんうん
水:その重圧感は自分で作ってると思うんですけど、それが一番 大きいかな・・・。
荒:単純に、体力的に、とか精神的に、とかでは分けられないってことですか?
水:うん。そうやって分けると、それに逃げちゃいそうな気がする。精神的にきつかったから、あの公演のあそこで中だるみをしたとかの言葉に逃げそうだから、敢えてそういう言葉を言わないようにしてます。
荒:でも2公演を踏んだということで、人間として重ねていく上で大きくなった、順応してきたということはないですか?
水:確かにあります。段取りが分かっているからこその強みはありますね。だけど更にそこで同じことはしたくないという気もあるから、せっかくめぐってきた一回一回のチャンスを大切にしたいと思っています・・・で、何だっけ?体力?(笑い)
全員:わはははは(笑い) !
水:体力は大丈夫ですよ
荒:つまり、そういう面で成長したというのは?
水:成長はしてますね、絶対。これまでの公演に出ていなければ、もっと手探りな感じで参ってたかもしれないですね。
荒:滝口君は?自分の成長を感じる時とかは?
滝:感じる瞬間は要所要所にあるんですけど、
それにとらわれてしまうと息詰まってしまうから、更なる努力をしないと!と思ってますね。
―ここで水谷が荒木の水をすべて飲み干してしまう
荒:すんごい喉かわくから(泣)
水:あっはは(笑)!
荒:で、話を戻すんですけど、その「茄子と豚」から今回のメンバーはほぼ同じということで、信頼感などはどうですか?
水:信頼はしてますよ、本当に。
滝:生まれますね、そういうものは。
水:ただ少し楽をしている面はあるかなあ。信頼感があるということで・・・えー。し、信頼してます!(滝口君の方を向いて)
滝:頑張りますっ!
水:まあ同じメンバーというのは信頼という点も勿論ありますけど、「茄子と豚」をやったということが自分の中で大きな意味のあることで、この人に違う事をさせてみたら・・・?ということを試したかったからなんです。
荒:それだけ興味がわいたということですか?
水:そうですね。興味の持てる共演者に恵まれた事が大きいですね。今回、実はちょっとあて書きが多いんですけど、それも「茄子と豚」をやっているときに(あて書きを)してみたいと思ったからなんです。全く違う人を選ばずにそうしたのは、そういう興味という点からなんです。
荒:新たな穴を開けようという?
水:ですね。こう見てて、この人はこうしたら面白いとか思いはじめて。例えば、滝口雄大が若者をやったらどうなるか?今まで20歳、30歳上の役しかやってないので。しかも(演じてきた役名に)全部「〜郎」がつくんですよ(笑)
全員:あはははは(笑)
水:幼一郎、ケンシロウ、ケンタロウと
滝:ははは、本当だ(笑)!
水:だからこの人に若者をやらせたら、しかも自分より下の年齢をやらせたらという興味がわいて
荒:がらっと変えてみては?と。
水:そう。そこでこういう穴をほじくらせたらどう変わるんだろうと思ったんです。
荒:変わったところはありましたか?
水:(滝口君に) 日常生活変わったでしょ?
荒:酒と煙草と女と女、みたいな(笑)?
滝:そうそう(笑)!その酒が必要なくなったというか、だから今はその変わった日常を元に戻そうとしています。それで悩んでる最中かな
* 思いを伝える演出
荒:初めての演出ということで、苦労はありましたか?
水:ありますよ、もちろん!演出もそうだし、主宰という義務も大変ですね。役者が求めているものがあって、それに答えるとき、自分の中で言葉にならない瞬間というのが多々会って、そういった壁を感じましたね
滝:そうなんだー、僕は分かりやすいと思うけど
水:わかりやすいこととは別に、それを言葉に出来ない時というのがあって、辛かったし、その言葉を考えている時間が無駄ということもあったし
荒:自分でさぐりつつという感じで?
水:水谷栄介の演出ってなんだろう?ってさぐりつつ。・・・これは小屋入りして感じた事なんですけど、演出家の仕事ってやる気を出させる事なのかなと思ったんですよね。前へ前へ行く気持ち、勢いを持続させる役割というか・・・
滝:でもそれって難しいよね?
水:けど、子供の頃からそっち方面は得意だったから、それはやろうと思ってたので。
荒:演出家でありつつ、自分が起爆剤になってやろうという思いですか?
水:それもあるし、役者と同じ立場に立ちたかった、ということもありますしね。演出がどうこうではなく、役者も演出も同じ位置で考えられる時というのが絶対あるはずだと思ったので、役者との兼ね合いも、いまではやってよかったと感じますね。
荒:とはいえ、大変だったんではないですか?
水:でも、周りの役者が凄く助けてくれたし、滝口君という信頼できるコネクターのおかげで、あまり大変さは感じなかったですね。自分は「役者として演出している」という意識でいますし。
荒:(滝口に)コネクターとして支えなくては、という思いはありましたか?
滝:支えなくては、というか、自分で考えようと思いました。けど、もっと期待に応えなくてはと思っています。
荒:松木君は?
松:まず水谷作の芝居に出たい!と思ったし、出るからには支えたいし、力を尽くしたいと思いましたね。
荒:なるほど。ではスタッフと役者との連携について聞きたいんですが。
水:今回は、「役者兼スタッフ」の人が多くて、稽古に出られなかったりして困った事もあったんですが、稽古場にそれを(スタッフ業を)持ち込む人はいませんでしたね。スタッフを兼ねてもらったのは、現場の思いを反映させて欲しいと思ったからです。また、さっきの「思いを伝えられない」ということがあったときには、音響さん、照明さんといった数多くの経験を積んできた先輩形に教えてもらったりして、本当に感謝ですね。
荒:そういった中で、演出する上で気をつけたことはありますか?
水:視野を狭めない事ですかね。 固定観念とか、原則、というのは極力無くしたつもりです。基本的にルールは無し、ラフプレーもOK!みたいな。自分が出来る事をそつなくこなすより、上を狙って欲しいと思いました。
―ここで滝口、終電がなくなったため退場。
滝:お邪魔しました。
荒:ではここから松木君にバトンタッチで。
松:よろしくお願いします。
* きっかけは少女アニメ?
荒:この作品を書こうと思ったきっかけは?
水:たまたま深夜にやってる少女アニメを見ていたときに、「友達以上恋人未満」という懐かしいフレーズを聞いて。その「尺度」がとても気になってしまって。それでなぜか忘れたんですが「キリンとゾウ」が思い浮かんで。」
荒:題名も決まって、「当て書き」というのは以前から決めていたんですか?
水:いや、書き始めてから決めましたね。当て書きといっても、その人がやれる事を書くのではなく、この人がこれをやったら面白いと思ったものを書きましたね。それでうまく歯車が回って、どんどんと当て書きになって言った感じですね。・・・湧き出てきたものを生かしたかったので。
荒:ダンスも含めて、見所などはどんなところでしょうか?
水:ダンスは・・・ちょっとまぜた程度ですね。劇中にインパクトを与えるためのものですから。見所といえば、隙だらけだけど、「訳の分からない自信で成り立っている」と言う所ですかね。「俺には出来る」という、出所の分からない、でも誰しもが持っている自信、ってありますよね?それを表現してみたかったんです。
荒:「素っ裸でも何故か自信のある」という妙な感じですよね?(笑)
水:そうです、そうです。
荒:では松木君から見所を教えてもらえますか?
松:当たって砕けた後でもある自信を、見て、感じて欲しいですね。
水:完全な自己満足なのかもしれないんですけど、冷めた感じで見ずに自分にも当てはめてみて欲しいですね。
* 今後の夢
荒:まだ早いのかもしれないですけど、今後やりたい事、というのはありますか?
水:誰も面白いと思わない、訳が分からない、と思われるような舞台を作ってみたいですね。全員笑うのも難しいけど、全員笑わない芝居、というのも魅力を感じます。
荒:では最後にメッセージを。
水:見て、可能性のある奴らだというところも含めて、若さとか、うーん、何かを感じてもらいたいですね。何か批判なりを言ってもらえるとありがたいです。・・・たまには褒めてもらって(笑)
松:ある意味で自己満足もアリかな、と思ってもらえたら嬉しいです。やっぱり、出演者が楽しまなきゃ始まらないと思うので・・・。
(先に帰った滝口君へ電話インタビュー)
滝:俺らの情熱を見てください。大人な9人の中学生をとくとご覧あれ!
荒:期待しているので頑張ってください。ありがとうございました。
水・松:ありがとうございました。
今回インタビューをしてみて、様々な新たな試みを行っている事を知った。これは彼の言うとおり、やがて血となり肉となるエネルギー、なのだろう。「やってやる」という自信に満ちたその目は、公演の成功を暗示しているかのように思えた。
水谷栄介
演劇倶楽部17期。昨年の新人公演「裸・フランス」に出演。脚本、ダンス振り付けも担当。
ほか企画公演「茄子と豚」に出演。
滝口雄大
演劇倶楽部17期。新人公演「裸・フランス」、企画公演「茄子と豚」に出演。
松木円宏
演劇倶楽部17期。新人公演「裸・フランス」、企画公演「茄子と豚」に出演。
インタビュー・文章 荒木拓