伊トウ本式がついにエンクラを卒業する。初外小屋、初史実物、話題盛りだくさんの
本式の劇団員(名取健太郎さん、木下珠紀さん、山田恵理子さん)にお話を伺った。
名取(以下名)大丈夫なの?このメンバーで。誰しゃべんの?
木下(以下木)こんな非社交的な・・・。
山田(以下山)まあ、ダウナーな感じで(笑)。
インタビュー(以下イ)はい・・・(←不安)では、今回でエンクラ卒業で、初めての
外小屋ですが、やっぱりそういったことは意識してらっしゃいますか?
名 芝居がどうこうという訳ではないけどやっぱりしてます。劇団としてね、そろそ
ろ覚悟を決めないと。
木 学生じゃないんだし。
イ エンクラをこの時期に卒業ということはある程度前から決っていたとは思います
が、前作『ガーラジオ』が終わった時はどんなことを思いました?
名 まあ、いつもどおりですよ。
イ 今回のストーリーは?
木 一言で言えば大河ドラマだよね。
山 今回は主に作家である檀一雄と太宰治という二人の人を軸にしてるんですが、今
までうちが描いてきた芝居って言うのは、同じシュチュエーションの同じ場所での
一ヶ月間もしくは一日を描いてきましたが、今回は檀一雄、太宰治の学生時代から檀
一雄が死ぬまでという約40年間を描いてるんです。
イ ああ、大河ドラマだ!
山 だから檀一雄は常に出てるんですが、最初のほう、檀一雄が青年時代に関わった
人というのと、晩年に関わった人というのは全くガラリと変わるんですね。登場人物
が。
その時代ごとに色がぱっきり変わって、その流れの中で魅せていく。そんなとこが大
河ドラマ的。
イ 名取さんは太宰治役、珠紀さんは檀一雄の妻檀よそ子役で実在した人物ですが、
史実に忠実な感じで役の研究とかなさるんですか?
木 よそ子さんの本とかは読んだけど、意識はせずに、台本上だけでやってるね。台
本自体もそこまで実際の人物に忠実であるわけでもないし。実際見る人も太宰以外の
イメージってあんまりないし、とらわれるイメージもない。
山 史実に忠実とかいうよりはあくまで、そこにいる役者とかの特性を生かして、お
もしろくなるように、生きる様に、描いてる。だから太宰本人達にしてみれば「違う
よ!」とかって思うかもしれない。
名 ぼくは特に本も読まず、普通にやってる。太宰の作品は中学の時全部読んだけど
ね。台本読んでてこれは芝居っぽすぎると思って伊藤さんに聞いたときも、「いや、
これは史実だよ」とかって言われた。太宰は暗いイメージかもしれないけど、それに
対照化するイメージがあってユーモアがあった人だと理解してる。太宰は大好きだっ
たから、役者冥利に尽きるね。
木 私も檀よそ子さんはずっとやりたいと思ってた。
イ それはこの芝居をやると分かる前から?
木 うん。『火宅の人』っていう檀一雄の代表作があるんだけど、ノンフィクション
でリアルタイムの不倫小説なのね。沢木幸太郎が書いてる『檀』っていう、妻のよそ
子さんとの対談形式の本があるんだけど、それにすっごく感動して、絶対この役やり
たいって思ってた。
山 檀一雄が浮気している間も、リアルタイムでそんな小説出されても妻は家で待っ
てた。そのときどんな気持ちだったのかとか、でも最後には檀一雄は妻のよそ子さん
を選んだんだよね、死ぬ時には。そのへんとかね。
イ おお・・・。(感動)
山 今回のテーマは「愛」だからね。伊藤さんって愛とか言わない人なんだけど、今
回に関しては様々な人々の「愛」がテーマ。
イ 歴史物ということで衣装や小道具、大変なんじゃないですか?
木 めちゃ大変(即)。着物とかね。ただ今回手伝ってくれる助手がいて、服飾の専
門学校生だから、着付けとかやってくれる。
イ 今回本式初めての方も多く、キャスト数も過去最多の13名ですが、稽古場の雰
囲気はどうですか?
名 暗い。
山 いや、大人・・・?大人・・・?(と名取さんに撤回を求めつつ)つまり、若さ全快で
はないというか。
イ 頼りがいのある演出助手さんがいらっしゃるとか。
木 すごく助かってるよね。
山 今までいなくてどうやってやってたんだろう?って思うくらい。彼の鋭いつっこ
みがないとキャストもつまらないと思うくらい。人気者だよ。
イ 今回の公演は「破天荒でどうしても欲深い人物達を描く娯楽会話劇」ですが、役
者さん達の中で誰が一番欲深いですか?
名 華房さんかな?(※今回初めて本式に客演なさるアナテジの役者さん)
イ どういったところが?
名 ああ見えて意外にね、みたいなところ。
木 爽やかで今回唯一の二枚目だけど☆▲■◇×。
イ 今回の芝居のみどころは?
名 今回は新しいこともやっているんだけど、それだけじゃなくて今までの伊トウ本
式が描きたがる人間がよりクリアに見えるようになっているので、分かりやすいと思
うので・・・。
木 今回は長い年月をやるということで、劇画タッチのところもあり、新しい部分も
あり。
イ 今回の舞台美術は抽象舞台?
山 そうだね、やっぱり長い年月をやるし、いろんな場所にもなるし。
名 かなり久しぶり。本式第一回公演以来。
木 いっつも一室の話ばっかりだたもんね。
イ 今回は初めて作、演の伊藤さんも出ますね?
名 ああ、本式では初めてかな。でもそれについては別に特別感慨もなく(笑)
イ はい、では最後にお客さんに一言
名 芝居、観て頂いたら分かると思うんで。イチローみたいに(笑)。見に来てくだ
さい。
木 正直、面白いと思うので、見に来てください。
稽古場での太宰は世の中の暗いイメージとは少し違った人物だった。それを取り巻く
人々もすべて実在人物らしいが、個性豊かなあ登場人物たちでとても興味深い。太宰
と檀という史実をエンターテイメント色の強い伊トウ本式がどう描くのか?10月8日
から中野スタジオあくとれにて。